カウンセリングの技法

それぞれのプロセスごとに、よく使われるカウンセリングの技法を学んでいきましょう。

人間関係を作る

人間関係を作るために利用される手法として、「受容」「支持」が挙げられます。

人間関係を作ることでクライアントが素直に内面を出すことができるようになり、次の問題の把握に役立つため、非常に重要なステップになります。

 

受容

自己理論で説明した、カウンセラーがいったん自分の考えを留保して、相手の考えや意見を尊重する姿勢・反応のことです。

これは単にあいづちを打つということではなく、話を聞く間にできるだけ自分を無にして相手の話に共感し、ごく自然な反応としてあいづちが出るような姿勢を取ることをいいます。クライアントは敏感なので、心にもないのにいい加減な相槌をうってもすぐに見抜かれるケースが大半で、その場合は人間関係づくりどころかかえって信頼を損なう原因になります。

こうなってはカウンセリングを進行することも困難になるため、相手を尊重した上で反応する姿勢を徹底しましょう。

受容のイメージ。心から共感することが大切

受容のイメージ。心から共感することが大切

 

支持

これは受容よりも積極的な働きかけの肯定です。受容では単に相手をそのまま受け入れる(認める)ことでしたが、支持は自主的に自分が共感したことをクライアントに伝えることを指します。

「息子が事故にあって、本当につらくて仕事に身が入らないんです」とクライアントが言っている場合に「なるほど、それは本当にお辛いでしょう」と心よりあいづちを打つのが受容なら、「それは本当にお辛いと思います。私なら仕事に行けないかもしれません。仕事に行っていらっしゃることが、既に立派なことです」というように、自然と自分に浮かんだ肯定的な意見を相手に伝えるようなイメージです。

これはカウンセラーは中立で自分の意見を述べてはいけないとする立場からすると行き過ぎた介入ですが、実際にはこのような立場を超えた共感が得られることによってクライアントと感情交流ができ、よい人間関係ができることによってカウンセリングがスムーズに進む場合もあります。

支持の例。支持は自分の意見を表明することになる。ただ、感情に支配された状態(逆転移)で支持を行うのは望ましくない。

支持の例。支持は自分の意見を表明することになる。ただ、感情に支配された状態(逆転移)で支持を行うのは望ましくない。

 

問題点を探り出す

人間関係が構築できてきたら、具体的な問題の正確な把握につとめます。

これらの手法は対話なので、問題点を探り出すためのステップを通じてリレーションが強化されることも失われてしまうこともあります。

上記で築いてきたリレーションを大切にしながら、問題点を見つけていきましょう。

 

繰り返し

相手が発言している内容を、解釈を加えずに繰り返すという方法です。

これは単にオウム返しをするということではなく、クライアントの話の要点をかいつまんでもう一度話すということです。

これによってクライアントはカウンセラーが自分の言いたいこと、言っていることを理解してくれたと感じる側面もあります。

繰り返されることによって、自分の考えや思考に直接相対することができるため、クライアントの客観的な認識を助けていくことができます。

繰り返しのイメージ。単にオウムがえしをするのではなく要約するように

繰り返しのイメージ。単にオウムがえしをするのではなく要約するように

 

明確化

クライアントが無意識的に感じていると思われることを、明確に言語化する作業です。これは精神分析の言う解釈ほど推測的ではなく、クライアントの発言内容・身振りなどの手がかりから直接的に推測するものです。

例えば、クライアントが浮かない声で、「今日は気分が乗らないので話したくないんです」と言った場合に「今日は何か嫌な事でもあったのですか?」というように、表現を少し明確にして相手に確認するようなものをいいます。

本当は言いたいこと、伝えたいことがあるのにオブラートに包むことでわかりにくくするということは、人間誰しもが無意識にやっていることです。そのオブラートを少しだけ外すことで、問題に迫っていく事ができます。

上の例であれば、その質問をきっかけに「はい、実は..」と最初の発言の背景を知るきっかけになるかもしれません。

明確化の例。過度な推測を加えないようにすることが必要。図の例では非言語や前後の文脈から「最近になってひどくなった」ということが言える場合の明確化

明確化の例。過度な推測を加えないようにすることが必要。図の例では非言語や前後の文脈から「最近になってひどくなった」ということが言える場合の明確化

 

質問

クライアントの状況を知り、問題を把握するためにはカウンセラーからクライアントに質問をすることは必要不可欠です。

ですが質問と一口にいっても上手な質問にはテクニックがあります。それは、相手が答えやすく、かつより多くを語りたくなるように「はい、いいえ」で答えられるような質問を避けることです。

例えば、「自分は勉強ができないと思っているのですか?」と聞くよりも、「自分の勉強する力についてどういう風に考えているのですか?」と聞いたほうが、本当に考えていることのイメージが掴みやすい回答が得られます。

質問のイメージ。はい、いいえで答えられないものを利用するのがよい

質問のイメージ。はい、いいえで答えられないものを利用するのがよい

 

これらの技法を適切に使うことができれば、人間関係の構築も問題の特定もしやすくなるはずです。

問題点が明確になって来た際に次に行うことは、その問題にどうカウンセラーが対処するか、ということになります。