カウンセリングの理論を学んできましたが、具体的にカウンセリングを行う際には様々な技法を活用していくことで、カウンセリングの目的を達成します。
カウンセリング実行のプロセス
理論によってその手法・重要視するポイントは異なりますが、カウンセリングは
- 人間関係をつくる
- 問題点を把握する
- 対処を行う
という3つに分けられます。
精神分析なら2を重要視しますし、実存主義的アプローチでは1を最も大切だと考えます。しかしながら現代のカウンセリングにおいては基本的に1〜3は踏むべきステップとして考えながら対処を行ったほうが現実的・効果的と言えます。
それぞれのステップについて適切なテクニックを使いながら、ゴールに近づいていきましょう。
カウンセラーの職業倫理
実際にカウンセリングを行うにあたっては、プロのカウンセラーとして守るべき職業倫理があります。
これはカウンセラーとしての信用・評判のためにも欠かせませんし、何よりクライアントを保護するために不可欠です。また、カウンセラーとして接するとき、自分は大勢のカウンセラーの代表として、「カウンセラー」というものそのものの評判をも背負っていると考えるべき部分です。
これらの規範を守れなかった場合、カウンセラーというものそのものへの信用が失墜してしまう危険性もあります。
主な職業倫理・規範として、以下のようなものが挙げられます。
- クライアントと一定の距離を保つこと
- クライアントと別の関係を持たないこと
- 秘密保持に努めること
- 自分の専門の範囲を知り、範囲外のことにまで広げないこと
- クライアントの自己決定の権利を尊重すること
- クライアントを自己の目的に利用しないこと
- クライアントに公平に接すること
- カウンセリングの効果を約束しないこと
それぞれの項目について詳細に見ていきましょう。
クライアントと一定の距離を保つこと
いかに共感的理解や受容が大切で一人一人とのリレーションを作ることが大切でも、カウンセリングは友達関係になることでも恋愛関係になることでもありません。
クライアントの問題解決の援助をする、という点でも、一定の線引きをして接するようにする必要があります。
クライアントと別の関係を持たないこと
これは、クライアントを妻や夫にしない、仕事上の取引相手にしない、などカウンセラーとは別の役割関係を持たないようにする、ということです。
直接的な利害関係を持ってしまうと、客観的にアドバイスすると利益相反が発生するためにカウンセラーとしての役割を果たせないというケースが発生する可能性があります。
もちろん、カウンセリング開始時点でこれらの関係がある人をクライアントにしてはいけません。こういう場合は、適切なカウンセラーにリファーするようにしましょう。
秘密保持に努めること
クライアントの発言内容はプライベートな情報です。当然他に口外されたりしないことを前提として、カウンセラーを信頼して話してくれるものになります。
興味本位で周囲の人に話すことはもちろん、記録をとったテープやメモなどの扱いにも厳重に注意する責任があります。
ただし、クライアントが自殺願望を述べた場合などにリファーするために専門家に相談する、など、倫理に照らし合わせても必要な場合はこの限りではありません。
自分の専門を知り、専門外のことにまで広げないこと
カウンセラーとして頼られると、つい力になってあげたいという思いから相談内容が自分の専門を超えるものでも対処しがちです。自分の知識の限界を知り、適切にリファーしましょう。
クライアントの自己決定の権利を尊重すること
クライアントはカウンセラーを選ぶ権利を始めとして、どのような方法でカウンセリングを受けるか、カウンセリングを受けた結果どうするかを選択する権利があります。
カウンセラーは場合によってはある種洗脳的に、相手の決定に支配力を持つこともできるでしょう。そういった力を濫用せず、自分の意向にそぐわない対応は認めないというような姿勢は避け、あくまで自主的な決定を尊重しましょう。ただし、クライアントに働きかけること自体を敬遠する必要はありません。
クライアントを自己の目的に利用しないこと
これは、カウンセラーの役割を利用して自分に都合のいい行動を取らせたり、面接料ほしさに不自然に面接を長引かせたりしてはいけない、ということです。
クライアントに公平に接すること
自分の気に入ったクライアントにだけは丁寧に接し、馬が会わないクライアントを冷遇する、というようなことをしないということです。
カウンセラーも人間ですから全ての人を好きになることはできないでしょう。ですが、プロフェッショナルとしての礼儀と節度をもって接する必要があります。
カウンセリングの効果を約束しないこと
カウンセリングでは、必ず改善する、必ず成功する、ということはありません。あるとするなら、それはカウンセラーの思い込みであると言えるでしょう。
面接の回数が複数回ある場合、希望を持たせるために効果を保証するようなことを伝えたい気持ちになることもあるかもしれません。そういう際には効果を約束するのではない形で、面接に来たくなるような表現をすることが望ましいです。
これらの規範を守りながら、クライアントの問題解決の援助をできるよう最善を尽くすのがカウンセラーの仕事です。