これまで紹介してきた理論・療法の他、日本で独自の発展を遂げた療法もあります。
森田療法
森田療法は、1874年生まれの森田正馬が1919年に創設した精神療法です。
自身も苦しんだパニック障害を克服するため、生み出された療法だと言われています。
“Dc morita” by 日本森田療法学会 – 日本森田療法学会ホームページ. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
「あるがまま」と呼ばれる態度で患者に接し、現在を受け入れた上でこれからを建設的に生きようとする姿勢を作っていくことを目指します。主に、対人恐怖症や強迫神経症の治療に用いられます。
内観療法
内観療法は、自分の身近な人とのかかわりを、
- してもらったこと
- お返しをしたこと
- 迷惑をかけたこと
の3点について繰り返し思い出すことによって、自己理解や他者への思いやり、社会性などが育っていくとする考え方に基づいた療法です。
病院などの施設では「集中内観」と呼ばれる、1週間などの期間、合宿のよう形で集中的に上のプロセスを繰り返す治療法が用いられます。
アルコール依存症患者など特定の問題がある場合は、「これまでに使った酒代を計算する」などの別のテーマが与えられる場合もあります。
いずれも、記憶をたどることによって自己を見つめ直し、新しい価値観に気づくことを目指しています。
箱庭療法
芸術療法の一種で、区切られた箱の中に置かれたおもちゃで自由に遊ぶことによって自己の表現をしていく方法です。
1965年、河合隼雄によって日本に紹介されました。
箱庭のサイズは決められており、その中に砂と適当なおもちゃを入れ、患者に遊んでもらいます。
箱庭療法は当初は子供向けのセラピーとして利用されていましたが、精神疾患の患者を含め少年・成人にも利用され、現在では学校の心理相談室を始めとした機関でも利用されています。
カウンセラーは箱庭の中に自由に表現する患者のそばにいて、表現物を作った後に協力して話をしながら内面を探っていきます。
これは言語よりも表現物のほうが適切に内面を表すことがあるという考えに立っているため、基本的な姿勢や行為はその他の理論と変わりありません。
これらの理論・療法も原則として心理・精神に何らかの問題を抱えた人を対象としていますが、一般のカウンセリングでも活用可能な考え方です。
日本では広く親しまれている方法でもありますので、心理を学んだ者として頭に入れておきましょう。
章末確認問題
この章で学んだことを理解できているか、練習問題で確認しましょう。