イラショナル・ビリーフには人それぞれ無数の種類がありますが、多くの人が陥りがちなものを挙げることで、理解の助けになります。
例えば、以下のようなものがあります。
イラショナル・ビリーフのよくある例
- 人から好かれない人はダメ人間である
- 欠点が少しでもある人はダメ人間である
- 他人は自分の気に入るように合わせて行動するべきである
- 自分が不幸なのは周りや環境が悪いからである
といったものが挙げられます。
こういったビリーフに対する指摘・論理構成を予め学んでおくことによって、クライアントがイラショナル・ビリーフ陥っているクリティカルなポイントがわかり、クライアントの自覚、理解を速やかに促進しやすくなります。
論理療法の活用
論理療法では、とにかく問題の根源は後天的に学習された間違ったビリーフであると考え、これを別のビリーフに置き換えることを目的とします。その際、カウンセラーが自分の意見や対処法の指示までを積極的に行うことも可能です。
この点がロジャーズの受容を前提としてカウンセリングを行っていくべきという考えと大きく異なります。そもそもクライアントが問題を抱えているのは誤ったビリーフであるから、それを除去すれば問題は解決するのであり、それを速やかに進める手助けをしない理由はない、という考え方です。
また、行動療法などに比べても行動一つ一つを修正していくのではないため、より根本的な対処法と言えます。
そのため論理療法を使ったカウンセリングでカウンセラーは教育者・上司の果たす役割に近くなります。これまで見てきた理論の中でもとりわけ実用的かつ根本的な手法と言えるでしょう。
注意点としては、これを行うにはクライアント側にかなりの合理的思考と、自らを変えていこうとする積極的意思が必要である点です。またある意味批判的・指示的であるために、クライアントとカウンセラーの間での信頼関係が築けず、合理的であっても受け入れられないという状態が発生しやすくなります。
クライアントの特徴を踏まえて活用していきたい手法です。
論理療法を活用する際の注意点
論理療法は、端的に言えば「クライアントを優しく論破する」ということになります。
したがってリレーションを保った上で、カウンセラー側が議論に勝利しないといけないのです。
イラショナル・ビリーフにも程度があり、クライアント当人の中でかなりの論理的試行錯誤を繰り返した結果、かなり深い部分でないと指摘できないイラショナル・ビリーフもあります。
安易に指摘した結果クライアントに論破されてしまうと、カウンセラーは信頼を失い相手にしてもらえなくなるでしょう。
論理療法を活用する前には、徹底的にロジカルシンキング力を鍛えておく必要があるでしょう。
章末確認問題
この章で学んだことを理解できているか、練習問題で確認しましょう。