論理療法とは、原則として合理的な判断力があるクライアントに対し、合理性・論理性をもってクライアントの無意識の不適切な考え方に気づかせ、それによって問題を解決しようとする方法のことを呼びます。
アメリカの心理学者アルバート・エリスによって始められました。
論理療法のポイント
論理療法では、無意識に信じ込んでいる考え方のうち、非合理的で不適切なものをイラショナル・ビリーフ、合理的で有用なものをラショナル・ビリーフと呼びます。
面接を通じてクライアントの話す内容や考え方の論理的な矛盾や飛躍を指摘しながら考えを深堀することで、イラショナル・ビリーフの存在に気づかせてそれをラショナル・ビリーフに変えていくというプロセスを行っていきます。
イラショナル・ビリーフの例
イラショナル・ビリーフには、例えば「就職できなかったから、自分は生きる価値がないダメ人間だ」というような考えが挙げられます。
就職できないことと、ダメ人間であることはイコールではありません。就職しなくても幸せに生きている人はいますし、就職のきっかけも一度できなかったからといって問題になることはないはずですが、当人はそう思い込んでいる、という場合です。
この際に、どうして就職できないとダメなのか?と聞くと、「働かない人には価値がないと思うから」などクライアントの意見が出てくるでしょう。
それをどんどん深堀して「働けば価値があるということなら、ボランティアをするということはできないのですか?」や「どうして働かないと価値がないと思うのですか?」というように聞いていき、いずれクライアント自身が「どうしてこんなに非合理的で意味のない考え方をしているのだろう?」と疑問に思わせることを目指します。
イラショナル・ビリーフの指摘方法
イラショナル・ビリーフを指摘するためには、論理的に「おかしいかも?」とクライアントに思わせる必要があります。
それは論理展開の矛盾や抜け漏れを指摘する、ということです。
例えば上記例で言えば、クライアントは
- 就職できない=ダメ人間
- 働かない人間には価値がないため、就職できないとダメ人間だと思う
- 就職のチャンスは1回しかないわけではないが、新卒じゃないといい会社で働けない
- いい会社じゃないと働いていないのと同然だと思う
という認識をしているとします。どうしてそう思うか、を深堀していくとこうやって認識の理由を聞くことができます。
上記認識では、いい会社=新卒のみ 新卒で失敗=いい会社で働けない 働けない=ダメ人間 という論理展開で、就職できない自分はダメだと決めつけています。
しかし例えば、「本当に「新卒じゃないといい会社で働けない」は真実なのか。客観的データはあるのか」「いい会社かどうかは入る前から判断できるのか」「働くには就職するという方法しかないのか」などの点を指摘していきます。
こういった点を指摘することで、クライアントは徐々に自分が信じ込んでいる論理を正当化する方法がなくなってくるでしょう。そのタイミングで、別の考え方をする方法もあるのでは?と提示することで「確かにそうかも」と納得してもらうように話を進めることが、イラショナル・ビリーフを扱う上で必要です。