ゲシュタルト療法を行う際に活用される手法は様々です。いずれも原則として現在ある特定のゲシュタルトを壊し、別のゲシュタルトを再構築することを目的とした手法です。
ホットシート
グループワーク的な療法で、大勢の人に自分の長所や欠点を伝えてもらう方法です。非常に強力である反面、ショックのあまり混乱状態に陥るケースもあります。特に欠点を伝える場合は実際にはその前に長所を伝えるなど、精神的負荷が過度にならないように気をつける必要があります。
役割交換法
いわゆるロールプレイングで、逆の役割を演じることで自分の思い込んだゲシュタルト以外の視点から考えます。カウンセラーが一方の役割を演じて、上司と部下、母と娘などで役割を入れ替えて実践していきます。
未完の行為
精神分析で言うトラウマに近い概念で、未完の行為というものがあります。
これは、通常と異なる形で中途半端に止まってしまっている出来事は、通常通りできていることよりも強く記憶に残り、継続的なゲシュタルトを構成するという考え方です。本来、何かいいことをしたら母親に愛情を向けて頭をなでてほしかったにも関わらず、小さい頃に母親が亡くなってしまったためにそれが未完の状態になり、何事にも極端に褒めてもらうことを求める、というようなケースが例です。この場合、カウンセラーが母親を演じて求めるシチュエーションを行うことで、未完の行為は完了できると考えます。
ドリームワーク
夢分析とは異なり、夢の内容を分析するのではなく、夢の中の登場人物や物になりきって考え方や気持ちを語っていきます。
句の繰り返し
特徴的な感情表現を大きな声で何回もクライアントに言わせることで、体感させようとする方法です。
例えば何事にも喜びを感じられないというクライアントに最近ごくささいなことでも嬉しかったことを聞き、「コンビニの店員に「気をつけていってらっしゃい」と言われて少し嬉しかった」と言った場合に、その「嬉しかった」ということを何度も繰り返し発言させるということです。
言葉にジェスチャーを合わせる
発言と身体表現が一致していない場合があります。悲しいのに泣けない、嬉しいのに腕組みをしたまま、などのパターンです。こういったことの逆で、発言内容に合うように体を動かすトレーニングを行います。
発言内容と正反対のことを言う
自分は弱虫で何もできない、と思っているクライアントに、「自分は強くてなんでもできる!」と発言させる、などの方法です。反対の考えを刷り込むのではなく、ルビンの盃の例のように気づいていない自分の逆の側面を気づかせていく、という考え方です。
トップ・ドッグとアンダー・ドッグ
「〜しなければならない」という自分と「〜したい」という自分を対話させて問題の解決を図ろうとする方法です。
身体的に体感するために、声に出して言ったり席を移動しながら行います。
これらの手法にも見られるように、ゲシュタルト療法には実存主義的、または行動主義的な要素があります。ゲシュタルトとは行動主義の条件づけをより対面的・人間的にしたものとも言えるでしょう。
章末確認問題
この章で学んだことを理解できているか、練習問題で確認しましょう。