ゲシュタルト療法

ユダヤ人の精神科医、フレデリック・パールズによって始められた考え方による療法です。

フレデリック・パールズ

フレデリック・パールズ

実存主義的なアプローチを汲み、過去に何をしたか、どうしてそのようになったかという理由を掘り起こすことよりも、今何をしているかという現在に注目します。

第3章内で一部紹介しましたゲシュタルト心理学の考えに基づき、人間の心理はバラバラの構成物が集まって出来たものではなく、分けることのできない一つのまとまりだと認識します。

ゲシュタルト心理学

ゲシュタルトとは意味を持った全体像のことです。簡単に説明すると、例えば「人」という漢字は多くの人にとって「人間」「ヒューマン」を意味する言葉です。ですが、記号としては単に2本の曲線がつながっているだけとも言えます。

「人」、という文字は、記号を文字としてのひとまとまり(ゲシュタルト)として解釈したために、初めて意味をなしてなんらかのイメージや情報を伝えることができるものです。

人を分解して「ノ\」のようにすると、意味がわからなくなります。

ゲシュタルト崩壊、というのは通常ひとつのまとまりとして認識できていたものがまとまりを失って上記「ノ\」のように認識されてくるため、意味を失う現象のことを言います。例では文字を取り上げましたが、文字の認識に関わらず現実の出来事全てにおいて、何らかのまとまりで認識するからこそ人間は知覚・行動できるというように考えます。

また、多くの人が一度は見た事がある有名な「ルビンの盃」という絵に示唆されるように、現実世界ではある事実が与えられた際のゲシュタルトは人によって異なります。

ルビンの盃 出典: zerogahou.cocolog-nifty.com

ルビンの盃 (人間の顔・盃の2種類の図が見える) 出典: zerogahou.cocolog-nifty.com

これはある種現象学的な世界の捉え方で、感じる世界をどのように受け取るかというまとまりは可変であるとする考え方です。

本来現象には複数のゲシュタルトを構成することができるのに、単一のゲシュタルトしか認識できなくなると不自由することがあります。例えば「大声を上げている」=「自分に対して怒りをぶつけている」という認識を常にするようになると、騒がしい場所でのツアーガイドなどが大声を出しただけで萎縮してしまう、というような反応が起こります。

ゲシュタルト療法では、こういった不自由なゲシュタルトを壊していき、新たなゲシュタルトを再構築していく補助をしていくと考えます。