交流分析の利用

エゴグラム

上述のP・A・Cの偏りを発見するために使われる手法がエゴグラムです。

一種の心理テストのようなもので、簡単な設問に答えていくことでP・A・Cの特徴を把握していきます。

簡単なものがありますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょう。下記に外部サイトでエゴグラムを設置しているところをご紹介します。他にも様々なものがありますので、活用してみてください。

エゴグラムの例(外部サイト)

http://psycho.longseller.org/ego.html

http://www.sinritest.com/ego-test.html

 

脚本分析

ここでいう脚本とは、自分の中に存在している無意識の規範・人生の目的、信念といったものを指します。「自分はこうなりたい」「男とはこうでなくてはならない」などの、行動に影響する基本信条のことです。

脚本分析とは、クライアントがどのような脚本を持っているかを分析し、その脚本が行動に悪影響を与えている場合、その脚本を修正する手助けをしていくことです。自己理論でいう自己概念の変容に近いものになります。

 

交流分析

P・A・Cの心を、様々な人間関係の中でどのように活用しているかを分析するものを特に交流分析といいます。

構造分析でのP・A・Cは個々人の特性を指していますが、実際に人と接するときに常にそれぞれの心の出現する強さが同じではないはずです。

例えば、家では大人しい礼儀正しい子供(P・Aが強い)が、学校ではユーモアたっぷりでイタズラが大好きなにぎやかな子供(Cが強い状態)である、といったケースです。つまり、人間は時と場合に応じてP・A・Cの強さをコントロールしていると考え、またそのようにTPOに応じた適切なコントロールができる状態を最も好ましいものと考えます。

相互の人間関係には、3つのパターンがあると考えます。

※P→C というのは、親心を発揮して相手の子供心に働きかけるようなコミュニケーションを指します。自分の心→相手の心、という関係です。

 

相補的交流

PにはP、CにはCと、相手のコミュニケーションパターンそのままに返す交流パターン。好ましい人間関係とされています。例えば、「先生のことが好きです(C→C)」と言われたときに、本心から「私もあなたのことが好きだよ(C→C)」と答えるようなケースです。

相補的交流の例。働きかけられた矢印と同じ向きに返す。例)P→CならC→P

相補的交流の例。働きかけられた矢印と同じ向きに返す。例)P→CならC→P

 

交差的交流

相手が求めたコミュニケーションパターンと、返すパターンが異なっている状態です。一般的には好ましくないとされますが、精神分析ではあえてこのパターンを推奨しています。例えば、「先生が寒いと思ったから、コートを貸してあげる(P→C)」と言われたときに、「あなたは私にコートを貸したいと思っているのですね(A→A)」と答えるようなケースです。

交差的交流が役に立つのは、例えばお店などでクレーマーに絡まれていきなり怒鳴られた場合に自分も感情(C)で応じて「なんなんだよ!」と怒らずに、「いったん落ち着かれてはどうですか?」などとPで応じたりする場合です。

交差的交流の例。一般には好ましくない交流パターンだが、精神分析などでは意図的にこれを利用していると言える

交差的交流の例。一般には好ましくない交流パターンだが、精神分析などでは意図的にこれを利用していると言える

 

裏面的交流

いわゆる本音と建前が違うようなコミュニケーションパターンです。

本心では怒っている(C)のに、言葉では「全然大丈夫ですよ」と笑顔で返す(A)ようなものを指します。

裏面的交流の例

裏面的交流の例

 

 

これに加え、交差的裏面交流という状態があります。これは、コミュニケーションにおいて双方が裏面的交流をしている場合です。つまりやりとりは全て表面的で本音が出ておらず、本心と逆のお世辞を互いに言い合っている状態などがイメージできます。これは人間関係のある姿としては最も望ましくない形と考えられています。

交差的裏面交流の例。ストレスも溜まりやすく、人間関係のパターンとして最も好ましくないとされる

交差的裏面交流の例。ストレスも溜まりやすく、人間関係のパターンとして最も好ましくないとされる

 

ストローク

交流分析の用語で、ストロークという考え方があります。

ストロークとは、相手に対する関心・感情の流れのようなものです。「肯定的ストローク」「否定的ストローク」という2種類に分類されると考えます。

  • 肯定的ストローク:愛情・好意・関心など、ポジティブな感情
  • 否定的ストローク:憎しみ・批判・嫌悪など、ネガティブな感情

人間は、肯定的か否定的かに関わらずストロークをほしがるものだと考えられます。嫌われるほうが無視されるよりもまし、ということです。

そのため、嫌われるとわかっていながらもやめられない行動のパターンがあることがあります。これはネガティブなストロークでも生み出さないと関心をもってもらうことができないため、目の前のストロークほしさに習慣化してしまうと考えられています。例えば、家庭で無視されている子供が極端ないたずらや非行に走ったりする心理もこの考え方で説明がつくこともあります。