特性・因子理論とは、いわゆる心理テストを利用して行うカウンセリング理論のことです。
心理テストとは本来、科学的手法においてある質問に対する答えをした人の傾向を統計的に分析し、「こう答える人にはこういうパターンが多い」ということを判断するためのものです。テレビでもよくあるような「赤を選んだ人は情熱的です」というような診断が例です。
ただ、日常会話の中では心理テストの結果があたかも真実で、特定の質問を選んだ人=心理テストの結果通りの人間である、というような表現をされがちです。
したがって誰にでも当てはまるような占い的な表現になるか、全く当たらないため心理テストなんて役に立たない、という印象を与えがちです。
ですがもともときちんとした心理テストは、統計的な実験結果を反映したものです。そのため、例えば「赤を選んだ人は70%の確率で情熱的です」というような表現になるのが正確なのです。
つまり心理テストの結果・解釈が100%正しいわけではないが、複数の心理テストを行いながらカウンセリングすることで、簡易的にクライアントの全体像を掴むことができ、問題解決の手助けや分析の役に立つ、というのが特性・因子理論の有用性なのです。
特性、因子の意味
特性、因子という言葉の意味を分解して考えてみましょう。
特性とは、どのような特徴を持っているかということです。「怒りっぽい」というのは性格特性と言えますし、「記憶力がよい」というのは知能特性と呼べます。
心理テストで出てくる解釈は特性に関するものがほとんどと言えるでしょう。
因子とは、その特性を構成するための必要条件のことです。
例えば、先ほどの例で記憶力がよい、と言った場合に見知らぬ街並を見ただけで街並のスケッチをできる、というような記憶力の場合には、その記憶を行うために「空間把握」や「創造性」が必要です。誰かのスピーチを丸暗記できるという場合は、「言語認識」などが必要になるでしょう。
このように心理テストを考えると、ある特性があることが浮かび上がることでその背後にある因子も浮かび上がり、そのパーソナリティの特徴をより深く把握することができるようになっていきます。
フランク・パーソンズとキャリア・カウンセリング
特性・因子理論はもともとはフランク・パーソンズという20世紀初頭のアメリカの運動家により始まったものとされています。
深刻な不況・労働環境の中で、悩める若者を指導すべくパーソンズらが立ち上がり、職業カウンセリングを始めました。
このように特性・因子を当てはめて行動を示唆する、という方法は元々職業指導を前提としていたため、キャリア・カウンセリングの場面では特に利用しやすいものと言えます。現在でも就職試験にこのような心理テストがあるのはこういった影響を受けていると言えるでしょう。
現在ではキャリアカウンセリングにとどまらず、幅広い場面で利用されています。