このように、現在の状況は本来の性格や性質によるものではなく、あくまで後天的な影響であると考える行動主義では、現在の性格や理想の状況というものが明確化されていません。
自己理論でいう自己不一致の状態を自己一致の状態に変えていく、というのは、カウンセリングの目的とでも言うべき好ましいと思われる変化がありますが、非常に科学的なアプローチを取る行動主義では人の内面の精神にはあまり注意を向けません。
過去よりも未来に目を向ける
原因はあくまで過去の出来事であって現在の心理ではないので、心理を解き明かしても意味がないと考えるため、性格の分類などがないのです。
そのため、「あなたはこういう心理があるから、こういう行動を取っているのですね」というような解釈がありません。
また、全ては後天的学習とするため、幼児期の出来事などに縛られない側面があります。何か現在に問題があっても、それは適した対応パターンを学んでこなかったからにすぎず、これから再学習するか誤った学習パターンを学習解除すれば健全になるというように考えます。
したがって、過去に受け入れがたい事実があるクライアントをカウンセリングする場合、その過去と直接徹底的に向き合い心理的な負荷をかける精神分析などよりも、目の前の対処法に集中するために受け入れられやすい場合もあります。
行動主義を形作ってきた人々
イワン・パブロフ
ロシアの生理学者で、ノーベル生理医学賞を受賞しています。パブロフの犬の実験の前に、唾液腺の研究をしている際に飼育係の足音で唾液が分泌されることを発見した際、条件付けの仮説を思いつきパブロフの犬の実験を行ったとされています。
ちなみに、パブロフの犬は飼い犬だったわけではなく、研究所で与えられた複数の犬でした。
エドワード・ソーンダイク
1874年生まれのアメリカの心理学者で、教育関連への影響を大きく残しており、「教育心理学」という本を始め、教育測定運動の父とも呼ばれています。
猫の問題箱の実験などを通してオペラント条件づけの基礎を築きました。
また、「本質とは関係ない特徴によって他の評価も決まってしまう傾向がある」というハロー効果と呼ばれる考え方もソーンダイクが発見しました。例えば有名大学を卒業している人は人としてしっかりしている、高級スーツに身を包んだ人は仕事ができる、など直接関連のないことにまで一つの特徴の影響が及ぶことが挙げられます。
ハロー効果は現在でも心理学の場面でよく登場します。