カウンセリングの役割関係をこなすためには、的確なカウンセリングに関する知識を持っていなければなりません。
前述したカウンセリングの分類にもよりますが、学校カウンセリングや結婚カウンセリングなど、個別の業界・世界でのカウンセリングにはその領域の知識も持ち合わせていることが望まれますが、ほとんどのカウンセリングの基礎となるのが心理学、特にカウンセリング心理学です。
ここでは、心理学の基礎を学ぶことで、よりプロフェッショナルなカウンセラーを目指していきましょう。
心理学とは何か
「心理学」という言葉は一般に普及し、心についての科学的な学問というようにイメージされていることと思います。そのため、テレビなどでもよく心理学をベースにしたクイズなどが出ることもあり、「心理学的には…とされています」というような表現を見るにつれ、物理学などと同じように、心の動きが研究されている学問と認識されているかもしれません。
ですが、学問的には心理学とは「個体の行動を研究する学問である」と表現されます。心を研究しているとは表現せずに、行動を研究すると表現するのは、心理学が科学であるためには研究対象が測定できることが必要なためです。状態を計るために心拍数などを測定して分析することはできますが、「心の働き」なるものを直接計測することは現時点でできていません。
したがって、科学・学問としての心理学は一般的な外面的行動(飲酒・暴力・不登校など)や思考・心拍のような内面的反応を総称し行動、と呼び、これらを研究しています。
そのため、心理学を学んだからといって心の全てが理解できる、というわけではありません。心理学はわかりやすく表現するなら、人々の行動を心理という側面から分析する学問と言えます。
心理学の役割
では、行動を研究することにはどんな意義があるのでしょうか。物理学には自然の法則を解き明かす役割があるように、心理学には以下の3つの役割があります。
- 記述
- 説明
- 変容
記述・・・現象をまとめ、調査研究の結果(事実)を整理すること
説明・・・記述での事実にはどのような意味があるかを解釈すること
変容・・・どうすればある行動が変わるかということ。対処法
まず、記述によってどのような現象があるのかを詳細に表現・分類し、次にその行動にはどういった意味があって行われているのかという説明が行われます。そして、行動を変えるために必要なことは何かという対処法として、変容を表現します。
この一連のプロセスによって、心理学は人々(厳密には、人間以外の生物も含む)の行動を科学することができるのです。
カウンセリングを行う際にもこの原則は活用できます。まずこれらのプロセスをそれぞれ独立して考えることにより、初心者カウンセラーが陥りがちになる自らの視点で単一の解決策を考えてしまうということが防げます。
というのも、一つの記述に対し、説明(仮説、解釈)はいくつも挙げられます。変容は説明をベースとするので、説明が異なれば変容も異なるでしょう。クライアントの話を聞いて、まずその現象を客観的に記述し、それに当てはまる解釈を複数考えていくような手続きが、熟練したカウンセラーには求められます。