カウンセリングを行う際、クライアント(相談者)とカウンセラーは何らかの形で人間関係を持ちます。話のイメージをつけやすくするために、1対1で面接する形態のカウンセリングを想定すると、互いを認識して面と向かって会話をする=何らかの人間関係を持つ、と呼べるでしょう。
この人間関係をさらに細分化すると、「役割関係」「感情交流」という2つの側面に分かれます。
役割関係
カウンセラー、クライアント、という立場としての関わり。主に、カウンセリングの目的に沿った無機質な内容の関係を指す
感情交流
一人の人間同士としての関わり。結婚はしているか、どんな食べ物が好きか、など個人的な趣味や思想に関しての交流を指す
カウンセリングでは、この2つの人間関係について適切なバランスを取ることが大切です。
相互の役割・責務・権限に基づいた役割関係のみでカウンセリングを行うと、学問的には正しくともクライアントが心を開きづらくなることで、何らかの問題解決・人格変容などカウンセリングの目的を達成が困難になることがあります。
特に精神分析理論・ロジャーズ理論など古典的な手法でのカウンセリングでは、カウンセラーが自己についての情報を出す事を過度に避ける傾向があります。
例えば、「先生には好きな人がいますか?」とクライアントが聞いた際に、「いる」「いない」と答えず、ただ「あなたは私に好きな人がいるか興味があるのですね」とだけ応える、といったような対応になります。
これではカウンセラーとしての中立性は保てるものの、現在ではあまり有用でない可能性も指摘されています。
一方で感情交流に偏りすぎるとただの世間話になってしまうか、カウンセラーが過度に個人的関係に深入りし、恋愛感情を抱くなどして本来のカウンセラーとしての役割を果たせなくなってしまうこともあります。
カウンセリングを行う際は一口に人間関係といっても、この役割と感情の人間関係はそれぞれ別個のものであり、一方に傾倒しすぎないようにすることが重要です。
章末確認問題
この章で学んだことを理解できているか、練習問題で確認しましょう。