カウンセラーの3つの基本条件

基本となる理論や適用場所、目的が違っていても、共通してカウンセラーに求められる三つの基本条件があります。それが、無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致を重視するという3点です。これを、「カウンセラーの三つの基本条件」と呼びます。ロジャーズ理論が元になっていることから、「ロジャーズの三つの基本条件」とも呼ばれます。

 

無条件の肯定的配慮

無条件の肯定的配慮とは、クライアント(相談者)を一人の人間として無条件に認め、クライアントが表現することはネガティブなものもポジティブなものもありのままに受容することを言います。
カウンセラーにとっては反対したい意見でも、興味のない内容でも、クライアントの発言を尊重し関心と配慮を持って傾聴することです。

ただし、これはクライアントの提案・発言を無条件に受け入れるということではありません。例えばクライアントが面接中に「お腹が空いたので今日の面接は中止にしてご飯を食べにいこう」という提案をされたとしたら、その提案を無条件に受け入れることはありません。あくまで尊重し配慮する、ということがこの条件のポイントです。

この無条件の肯定的配慮を、「受容」とも呼びます。

 共感的理解

クライアントの立場、シチュエーションにたって物事を考える姿勢のことを言います。自らが30代の女性で相談者が40代の男性だった場合、「自分だったらどう考えるか」ではなく、「自分が40代の男性のその立場なら、どう考えるか」という視点に立って理解しようとすることがこの条件です。

自分の立場ではわからなくても、相手のことを想像しながら理解しようとすることが大切

自分の立場ではわからなくても、相手のことを想像しながら理解しようとすることが大切

自己一致

カウンセラーが、自身の本心を適切かつ素直に認識している状態のことを言います。セルフイメージと現実が一致している状態とも言い換えられるでしょう。自分は怒らない落ち着いた人だ、という風に本人が思っているにも関わらず実際には毎日イライラして怒っていて、さらに本人は全く自覚がない、という状態は自己一致していない(=自己不一致)状態であると言います。自己一致は、自己受容、純粋、とも呼びます。

 

これらの3つの基本的条件は、全てが同時に揃ったときにカウンセラーとしての資質を満たします。

全てを実際のカウンセリングで満たすのは長い期間が必要になりますが、少しずつ習得していきましょう。

 

ポイント:受容という言葉の使い方

よく間違えられる点として、カウンセリングでは受容、という表現が頻繁に登場します。受容という言葉にはそれ自体に無条件の肯定な配慮という意味が含まれているので、相手に配慮した受容、などの表現は重複することになります。

また、これはカウンセリングの際にクライアントに対して伝える言葉ではなく、あくまで姿勢としての条件であることも頭に入れておきましょう。

 

受容・共感的理解が大切になるシーン

クライアントの発言の中では、自分が全く同意できない意見が出てくることがあります。例えばカウンセラーであるあなたが、男女は協力して家庭を築くべきだと考えているのに対し、クライアント(男)が女は家にいて家事をやっていればいいんだ、というような発言をした場合などです。

よくない例

カウンセラーも一人の人間ですから、普通に聞いているだけだと無意識にそういった考えを否定したくなり、「いやいや、男性も協力しないといい家庭は築けませんよ」などと発言するとクライアントの感情を刺激し、「この人には何も話したくない、わかってもらえない」という印象を与える危険性があります。
口に出さないまでも表情や身振りに否定的なニュアンスが出てしまうことがあるでしょう。こういった感情が相手に伝わらないようにすることが、素人から初心者カウンセラーにステップアップするための第一の関門です。

そのためには普段からあらゆる物事に対して「自分はどのような考えを持っているのか」を明確に把握しておく必要があります。自分で考え方を自覚している場合には、それに反する考えが登場してきた場合の対処に気をつける、ということが可能なためです。