カウンセリングの理論・技術を学んだところで、実際のカウンセリングはどのように行っていくかより詳細にイメージするためには、カウンセリングの実習を行っていくことが必要です。
これまで見てきたように、カウンセリングでは一つ一つの反応が効果を大きく左右します。したがって、本当にカウンセリングに熟達するにはたくさんの実地経験を積むしかありません。
しかしながら、全くどのように受け答えをしたらよいのかを学ぶ事なく、いきなり本番のカウンセリングに挑むことはプロフェッショナルとしての責任に欠け、クライアントに対して大変失礼なことにあたります。本章では、カウンセリングの実地に挑んでいることをイメージしながら、様々なケースに対して詳細なケーススタディをすることによって、カウンセリングの実力を上げることを目指します。
ケーススタディで模擬実習を行う
このケーススタディでは、実際の面接カウンセリングの場面でよく出てくるようなケースを複数ピックアップしました。
カウンセリングでは、「この場面は必ずこうすべき」というようなリアクションが決まっている場合は稀です。特に実存主義的な立場を取る場合はクライアント個人個人と心を通わせることが大切ですから、非言語のクライアント・カウンセラー双方の表現が重要になり、これらの情報はケーススタディでは表現しきれません。
また、その場面場面でカウンセラーが行う反応によって、会話は無数に変化していくはずであり、カウンセラーの反応が一つに対しても、クライアントの反応は本来無数にあるはずです。
しかしながら今回のケーススタディでは、原則として起こりやすいであろうと考えられるパターンに絞って学びつつも、カウンセラーの選択によって変化していくクライアントの行動を感じられるよう、それぞれの箇所で選択式の答えを選ぶことで会話が進むように設定しました。
いわば恋愛シミュレーションゲームのような、都度会話に対する選択肢が登場してきて、それに応じてストーリーが変化する、といった構成です。
現実をかなり単純化していますが、これによって擬似的に多くの経験を積む事ができるでしょう。
カリキュラム全体の復習・応用をするためと捉えながら、ケーススタディに挑んでいってください。そのため、先の進展がない選択肢を選んだら都度ページを戻り、それぞれの選択肢を選んだ際のパターンを見ていくようにしましょう。
これによって、あなたの反応次第でカウンセリングがどう変化していくかより強くイメージできるようになるでしょう。
これらの前提を踏まえ、ケーススタディ活用の際に注意すべきポイントがあります。
ケーススタディ活用の際に注意すべきポイント
絶対不変の答えはないことを理解する
あくまで、カウンセリングを行うにあたっての経験値を増やすために、便宜的にそれぞれの対応に応じたクライアントの反応を仮定しています。したがって、このケーススタディでいい反応が得られたからといって、類似のケースには必ずその反応が正しいと考えることは危険です。あくまで、そういうケースもあるという可能性を想定しながら話すという工夫が必要です。
クライアントと対面しているような気持ちで行う
実際の面接で行うのと同様の感覚に近づけるため、目の前にクライアントがいるつもりになって行ってください。
選択肢を見る前に、自分ならどう反応するかを自分の言葉で考える工夫をする
実際のカウンセリングでは、どう反応するかは自分で考えなければなりません。選択肢はあくまで練習のための、パターンを考えるものです。
選択肢を選ぶ際は、自分が実際にアクションをしてみる・していることを想像する
例えばクライアントに対する反応として、「ロジャーズの理論に基づき、受容し「なるほど、苦労されたんですね」」と答える場合には、声に出して台詞を読み上げることが望ましいです。なぜなら声の調子次第で、実際にはクライアントの反応も変わるからです。同じく表情も、できるだけリアルにイメージしながら行うことでより効果的になります。
また、ケーススタディでは、クライアント(Cl)、カウンセラー(Co)で表示します。
それでは準備ができたら、ケーススタディに移っていきましょう。