自己理論を活用した面接の目的は、自己不一致の状態にあるクライアントを自己一致の状態に導くことにあります。
前述したように、自己概念を変容させることは大きな恐怖を伴うものであるため、クライアントとカウンセラーのリレーション(人間関係)が不可欠だと考えます。そのため、自己概念を導いていく際の技法と同時にカウンセラーの姿勢・態度や人間としての心構えなども重要になってきます。
目的を達成する理想的なカウンセリングのためには、以下のような条件が必要と言われています。
クライアントの自己一致を実現するための条件
- カウンセラーとクライアントが会うこと
- クライアントは自己不一致の状態にいること
- カウンセラーは自己一致の状態にいること
- カウンセラーはクライアントに対し無条件の好意を持つ
- カウンセラーはクライアントの世界・考え方に対し共感的理解をする
- カウンセラーが4,5の状態であることをクライアントに伝える
この条件は冒頭のカウンセラーの条件に該当するものです。
こちら精神分析と比べて、クライアントとカウンセラーのリレーションを重要視しています。単に分析を行うだけではなく、クライアントが心を開きやすいように6を行い、安心して自己概念に手を加えていくことができる環境を作ることが必要です。
自己概念はたいてい、「本来の有機体的な自分をそのまま表現すると批判される・攻撃される」といったような恐怖から変容を拒絶することが多くなります。
したがって自己概念の変容を促す際には、「あなたが変わっても私は味方ですよ」、ということを言語的・非言語的に的確にクライアントに伝えなければならないのです。
自己理論の問題点
自己理論では、自己不一致の状態が全ての原因であると考えます。したがって来談者中心療法の面接ではひたすら自己概念の変容を試みることになります。
ですが現実には、問題の全てが自己不一致にあるとは限りません。自己理論では現象学的世界を重要視するため、事実が変わらなくても認識を変えればクライアントにとっての世界が変わる、と考えがちです。
そのため単に環境が不適切であるために現実の問題を起こしているというケースも多々あり、必要もないのに自己概念の変革という難題に挑んでしまうこともあります。
自己理論を利用したカウンセリングでは、大局観を失わず何がクライアントにとって有益かを考えながら、必要な範囲に留めて自己概念の変容に挑むべきでしょう。
章末確認問題
この章で学んだことを理解できているか、練習問題で確認しましょう。