防衛機制とは、出来事や環境に対して無意識のうちに自己を守るために行っている行動のことです。どうやって環境に適応しているかという意味で、適応機制ともいいます。
通常誰しもがこの防衛機制を働かせていますが、必要以上にこれらが働き、自己を防衛しようとすると不健全な性格であると判断されます。
防衛機制の種類
抑圧
欲求を無意識下に押さえつけ、我慢すること。(例:家庭内暴力を受けている子が、本当は泣きたいのにさらにひどい扱いをされるのを恐れて泣けない)
抑制
抑圧よりは意識的に、欲求が表に出ないように抑えること。(例:チョコレートを食べたいが、学校では食べてはいけないので我慢する)
昇華
社会的に認められる形で欲求を発散させること。(例:何か物を壊したい衝動があるので、空手部に通ってスポーツで発散する)
合理化
欠点を認めず、自分を正当化すること。酸っぱいブドウのたとえ。(例:ぶどうが取れないのではなくて、取れないところにあるぶどうなんておいしくない)
感情転移
特定の人に向いていた感情を、類似の人に向けることで解消すること(例:別れた年上の元彼を忘れられないので、似た歳の人を好きになる)
置き換え
本来関係ない部分にまで感情を向けること。(例:嫌いな人の使っているノートは触るだけで不快)
知性化
感情を生々しく表現する恐怖から、頭が良さそうな抽象的・回りくどい振る舞いや表現をすること(例:君が好きだ、と言えずにあなたのことを表現した詩を書きました、といって渡す)
退行
幼児期の感覚や感情に浸ることで欲求不満を解消すること(例:人目も気にせず町で大泣きする)
逃避
現状を避け、他のものにエネルギーを向けること(例:学校がおもしろくないので授業中にバイクで遠くに走りにいく)
同一化
自分以外のものと一体になったと思い、自分を守ること(例:私は立派な先生に学んだのだから私は立派だ)
摂取
自分に周囲のものを取り入れることで心の安定をはかり、自分を守ること(例:出張中に妻の写真を大切に持ち歩く)
投影
自分の欠点を認めず、自分以外のものに責任をなすり付けること(例:私がうまくいかないのは意地悪な上司のせいだ)
反動形成
認識している自分の弱さを隠すために、逆の極端な行動をすること(例:自分に自信のない人ほど虚勢を張る)
補償
何らかの行動をして、劣等感を克服すること。建設的な防衛機制と言われる(例:いい会社に就職することで、貧乏な家に生まれた劣等感を克服する)
防衛機制の解釈
防衛機制を考えるときは、それらの行動がどの防衛機制にあたるかを考えることが必要です。つまり、上記の個別の例では 防衛機制の種類→例 だったため理解しやすかったと思いますが、逆に事象→防衛機制 を当てはめるには解釈が伴います。
防衛機制を理解するには解釈が大切です。
次の例を見てみましょう。
防衛機制の例
頭が悪いと周囲にバカにされつづけたある高校生は、始めは自分は本当に頭が悪くて何もできないのだから勉強してもしょうがないと思い、大学に進学することも人生も諦めていました。
何をやっても周りに馬鹿にされて進めないから、何も頑張らないほうがマシだと考えていました。
しばらく立って、人生このまま終わるのは嫌だと思い、勉強ができないならその代わりサッカーに明け暮れて、スポーツができるようになれば自分も一人前になれると思い人一倍頑張っていました。
そうしてサッカーの主将になると、今度は戦略を立てる必要が出てきました。戦略には勉強が欠かせません。
「また勉強か..いやだな」と思って逃げそうになった矢先、日本代表の監督も努める有名な監督・田中氏が「自分も馬鹿で戦略性がないと言われていた。勉強は苦手だったが、サッカーのことなら好きだから自分は天才になれるはずと恩師に言われてから、猛烈に戦略を勉強できた」というインタビューを耳にしました。
そこで、「あの人でもそうだったんだ。自分はあの人のようになれるかも」と思い、自分は田中氏のような人間だと考えるようになってから、ひときわ戦略を学ぶ意欲が湧いてたくさん勉強できました。自分の背番号も現役時代の田中氏と同じものにしてしていたようです。
解説
この例にはいくつもの防衛機制が含まれていると考えられます。
最初の何を頑張ってもしょうがない、というのは自分が頑張ったりできないことを、周りに頭が悪いと言われるせいだから、と「合理化」していると言えます。本当は人生を謳歌したい、という欲求を抑圧しているとも言えるでしょう。
また、サッカーを頑張りだしたのは「昇華」と言えます。
有名監督のところでは自分を「同一化」することで強くしましたし、背番号を一緒にしたあたりは「摂取」と言えるかもしれません。
上記の解釈は一例です。他にも、様々な解釈ができるでしょう。また、日常生活には防衛機制の観点で見ると様々なことに説明をつけやすいシーンが豊富にあります。
普段から考えてみる習慣をつけていくことが、防衛機制の理解には欠かせません。